前へ章の目次次へ

騎兵

胸甲騎兵

胸甲騎兵はヨーロッパにおける重騎兵が次の段階に発展したことを表します。この騎兵が着用する鎧は以前よりはるかに軽量になり、スピードと機動性が向上しました。乗馬技術に大きな注意が払われました。胸甲騎兵は方陣隊形を取っている敵の騎兵と歩兵の両方に強力で極めて効果的な打撃を与えることができました。胸甲騎兵の装備は、胸幅が44センチ(17インチ)、重量8〜9キロ(17〜22ポンド)で、縦の長さが約47センチ(18.5インチ)の鋼鉄の胸甲でした。胸甲は騎兵の胸と背中を刀剣や(約50歩の距離で発射される)マスケット銃の弾丸から保護され、ピストルの弾丸は直射(2、3歩離れた位置)の場合に限り、胸甲を貫通することが可能でした。胸甲騎兵は鉄兜を被ることもあり、スエードのカラー、制服、革のズボン、長靴を身につけ、ブロードソード、ピストル2丁、短い騎兵フリントロック式マスケット銃または騎兵カービン銃で武装していました。胸甲騎兵は1,800〜700歩の距離から密集隊形で馬を走らせ攻撃を仕掛けました。彼らは敵の列を突破するためにブロードソードを使い、ピストルは二次的な武器でした。フォン・マルビッツ将軍は、「この兵は何が起きても必ず突破する。彼らの半分は撃ち落されるか、溝にはまって身動きできなくなるかもしれない。そして数百名が命を落とすことになるだろう。しかし、それでも彼らは決して足を止めないし、引き返すなどもってのほかだ。なぜなら、密集隊形で前方を疾走する数百頭の馬の引き起こす旋風と混乱の中では、最も優秀な騎兵でさえ自分の馬を制御することはもはや不可能となる。彼らはどうしても突破するように運命づけられているのだ。たとえ彼らのうちの一人が馬を御することに成功したとしても、馬を止めようなどと決して思わないことだ。そんなことをすれば後方の馬によって打ちのめされ、踏みつけられるだけだ。いったん急襲が開始されたら、突破に成功するか、あるいはその部隊が存在しなくなるかのいずれかの結末になることに疑いの余地はない。」と記述しています。胸甲騎兵は特権を与えられた兵力であり、多くの軍役の義務を免除されていました。