歩兵
マスケット銃兵
1692〜1704年に使われたスウェーデンのマスケット銃は重量4.7〜5.0キロ(10〜11ポンド)で、口径22ミリ、射程はおよそ225メートル(740フィート)でした。フリントロックと紙製の薬包(カートリッジ)の導入により、マスケット銃の射撃間隔は著しく向上し、毎分2〜3発までに上がりました。17世紀の全体を通じ、マスケット銃兵は至近距離の戦闘では極めて弱い存在で、槍兵の援護を受けずに騎兵の突入に対応することはできませんでした。17世紀末になると銃剣が導入され、マスケット銃を槍の一種に変えましたが、銃剣は本物の槍には劣りました。しかし、これらの工夫はどれもマスケット銃兵の軍事能力を大幅にアップすることに貢献し、槍兵が軍隊から徐々に姿を消していったのに対し、マスケット銃兵は汎用歩兵とでも言えるような存在に変わっていきました。新たに考案されたマスケット銃兵の方陣隊形は騎兵の突入にも対応することができ、隊形を構成する横列の数も6列から3列に減少しました。最初の列はひざまずいた姿勢で射撃し、2列目は直立して射撃し、3列目は前にいる兵士の列の合間から射撃しました。極めて重要視されたのは、音を聞いただけでは1発しか撃っていないと間違えるほど完全に同時に一斉射撃をすることでした。同時に何発も命中させることができれば、敵の士気をくじく効果が増大すると信じられていたのです。大隊または小隊は全体で一人の兵士のように射撃するよう教育されました。兵士たちは厳密な戦闘手順に合わせて訓練され、兵卒は何事も自分で判断する権利を与えられず、命令に従わねばなりませんでした。歩兵は正しいテンポに合わせて行進し、その左右を士官によって挟まれており、彼らは命令されると、一斉射撃を行いました。そのため頼りにならない、兵士に不向きの人材でも軍に迎えられ、個々の兵士の価値はそれまでの時代と比べて低下しました。優れた射撃間隔は1分につき最高4発という速射が一般的でした。18世紀には、マスケット銃兵のコストははすでに以前よりはるかに低下し、その人数は増大し、様々な戦闘にも使えるようになっていました。